ぺーぺー審神者が大包平を見に行ってきた日の話

タイトルの通りです。

前提が長いので、それをすっ飛ばしたい方は下線付き青文字までスクロールしてください。

 

刀剣乱舞、略してとうらぶ。私がこのゲームを始めたのはリリース直後の2015年1月、初期はよくネタにされた呪われし相模サーバーの審神者でした。

当時艦これも齧っていて、「つまり艦これの刀版か〜」と呑気に始め、イラストで銃を持っていたので「おっこの子は銃と刀の二刀流か!」と陸奥守吉行を選んで(なおすぐにその幻想は打ち砕かれ)、資材も少ない中レア太刀鍛刀の為にそれなりに周回をして、三日月宗近鶴丸国永が出たあたりで満足してしまって、1度離れてしまいました。それからも、TLやリアル博物館の展示会、アニメに映画、ミュやステが盛り上がってるな〜とは思いつつも、他のアプリゲーも触ってて時間ないからいいか〜と自ら近寄ることはなく(アニメだけは花丸と活劇両方視聴した)はや5年。

ふとTLで、2020年の年明けに5周年を記念して大々的な展示会(本丸博)をやるという情報が流れてきた。何となく当たったら見に行こうかな〜レベルで申し込んだらあっさりと当たり、慌てて友人を誘って池袋まで行ってきました。

展示されていたのは、それぞれの刀剣男士達の新規イラストにアニメ本丸のジオラマ、ミュやステの軌跡、審神者達の俳句と三日月宗近蛍丸を復元した刀剣(あともうひと振りあったような気がするけど思い出せませんすみません…)。

その模造刀を見て、苦い記憶が蘇った。

 

そもそも日本史より世界史が好きなので、日本史については概要レベルの基礎知識しかなく、戦国武将についても戦国BASARAにいたキャラクターの名前を知ってる程度。

そんなレベルの知識で、2015年某博物館でやっていた刀剣の展示に連れて行って貰ったことがあった。多分何振りかその時実装されていたキャラクターの実物の展示があったと思うのだが、記憶に残ってるのは蜻蛉切だけ。

というのも、こういった展示で刀を見るのも初めてで、柄(つか)のついていない刀の刀身のみを見るのも初めてな状態。日本刀なんて漫画アニメ、あるいは時代劇でしか見たことが無く、当然柄があって鍔(つば)の先に刀がついているものだと思っていたので、「そもそも何で柄が無いの?」という状態からスタートした。けれど当時連れて行ってくれた友人(本丸博に行ったのとは別の友人である、念のため)は「そういうものだから」としか答えてくれず、また人が多かったのもあってじっくり見ることも出来ず、長いのが太刀で短いのが短刀かな?くらいの区別しかつかなかった。何だか長短しか分からないな、全部同じに見えるな、というのがその時の感想。

その中で蜻蛉切だけ覚えているのは、多分唯一の槍の展示で分かりやすかったからだろう。刃先(鋒/きっさき)が鋭くて凄い綺麗だな、これは蜻蛉も切れちゃうな、と感じたことを覚えている。

その後物販コーナーで共通の友人とばったり出くわしたのだが、当然話題は刀の話。共通の友人は図録を買ったとのことで盛り上がっていて、展示をあまり楽しめなかった私にはアウェーな空気。

私にとって、刀とはそういう、あまり見ても面白くないもの、だった。

 

 

なので、本丸博で三日月宗近の模造刀を見てもそもそもどこに三日月があるんだ?てか、打ち掛けって何だ?の状態で全く感慨も無かった。三日月宗近というキャラクターは好きだけど、刀身は見ても面白くないなあ。そんなことを隣の友人にぼやいたら、打ち掛けっていうのはここのことだよ、ほら三日月っぽいでしょ?と解説をしてもらった。それを聞いて見てみると、成程これか!と自分でも三日月を発見出来てとても新鮮な驚きと、感動を覚えた。

刀身の展示に対してのマイナス感が払拭された瞬間だった。

 

その時期ちょうどシール交換で好きな刀がひと振り貰えるキャンペーンをゲーム内で行っていた。私は自分がプレイしていない時期に実装されたにも関わらず大包平が好きで、けど7面でドロップするから短刀を育てていない弊本丸ではそもそも6面すらクリア出来ないから無理だ、と諦めていた。そんなところにこのキャンペーンである。これ幸いと大包平を交換した。

 

大包平は可愛かった。姿かたちはカッコイイし、声も自信に溢れていて大きいし、かっこよさは天元突破しているのだけど、言動がいちいち可愛い。手に入れると余計可愛くて、もっと色んな顔が見たくなった。

調べてみたら、ステの方には出演しているらしいが追うのはかなり大変そうだった。というのも、ステは第一作から最新作までストーリーが連綿と続いていて、大包平目当てに途中から見ても分からなくなりそうだったからだ。

そしてミュには出ていない。グッズも、過去には幾つか出ていたようだが現在入手可能なのはピタぬいくらいのものだった。

可愛いけど、本命ジャンルもあるしピタぬいは持ち運びは嵩張るんだよなあ…と悩んでいたある日、ふと思い出した。

 

大包平は現存する刀だ。ということは、展示をやっているのでは?

 

確か本丸博に行った友人もそんなことを言っていた。すぐに朧気な記憶を頼りに調べたらトーハク(東京国立博物館)の情報が出てきた。残念ながら調べた当時(2020年1月)は展示していなかったが、大包平は頻繁に展示される刀らしい。

その友人に、展示された際は実物を一緒に見に行ってくれないか、と頼んだら快諾が返ってきた。

 

そして数ヶ月。自粛期間の引きこもりが性に合うなあとのんびりしていたら例の友人からLINEが来た。

 

大包平来た」

 

軽装かと思って飛び起きてTLを確認してみたら違うようだ。はてさて??と思いながらLINEを開いたら、トーハクで展示される日程が決まったとのことだった。

これは何としても行かねばならぬ。

友人と日程をすり合わせてチケットを取ってもらい、大包平に合わせて臙脂の鞄を引っ張り出しいざ当日。

とうとう、トーハクを訪れる日がやってきた。

 

 

 

 

長かったが、ここまで前提でした。お付き合いありがとうございます。

ここから本編!

 

 

 

さて、トーハクの展示室も初めてなので全体的にこんな感じなのか〜と軽く展示を見ながら順路を進む。刀のコーナーに入るとすぐ左手に青いテープで区切られたラインがあった。

 

大包平をご覧になる方はこちら』(うろ覚え)

 

それを見て、とりあえずまず並んだ。あまり人も並んでおらずすぐに順番がやってくる。

五年前や本丸博で見たのと同じ、刀身だけの展示。うーん、何となくだけど大きい。立派だな。

さて、説明文を読んでみよう。

包平古備前鍛冶の(中略)大太刀で地鉄(じがね)・刃文(はもん)が抜群に優れ(以下略)』
(フリガナ付きだった。有難い…)

 


??????

 

 

じがね、と、はもん、て何だ???

この刀のどこのことだ????

 

 

 

さっぱり分からなかったので、後ろで待っててくれた友人を呼んだ(一人でじっくり見たいかな、と思って私に先を譲ってくれていた。女神である)

 

彼女に解説してもらって、とりあえずそれぞれ地鉄と刃文が何を指しているかは分かった。それと銘(めい)の場所や、反(そ)りの角度など。そういった見どころポイントを教えてもらいながら見ていると、係員さんに後ろが詰まってますので…と注意されてしまった。

慌ててそこをどいて、反対側の壁のところで改めて解説をしてもらう。そこにも刀と短刀がひと振りずつ展示されていた。

それぞれの違いなんかを交えながら歴史の流れも挟みつつの解説。これが抜群にわかりやすく、面白かった。何気なく使っている日本語が刀由来だったり、歴史の別側面を見たり。

 

教えてもらった知識を元に、少し先にある沢山の刀身と、縁頭(ふちがしら)や切羽(せっぱ)、笄(こうがい)を見てみる。縁頭や切羽については単品で見ても一体何か分からなかったので更に解説を交えて教えてもらう。

そうすると、これが何のための道具なのか、人々が何のためにこれを使っていたのか、というのが分かる。

これは楽しい。

 

刀身も見てみる。長船、一文字、藤四郎。ゲーム内で聞いたことのある刀派のものや、知らないものも沢山展示されている。それこそゲームに実装されているそのものの刀も何振りか展示されていた。

刀の表情、と言われる刃文は勿論全て違うし、反りも全然違う。厚藤四郎なんかはその名の通り本当に刀身が厚い。この違いが分かると、五年前は同じに見えたものが全然違うと分かる。

茎(なかご)の先が直線だから削ったものだ、これは削っていない本来の長さのものだ、なんて推測することも出来るようになった。

鎬を削るのシノギ、ってここのことなんだ!

えっ、刀に釘打つの?!目釘?!なんて素人丸出しの質問をひと通りして、付け焼き刃ながらある程度の知識が揃ったところで、再び人が少ない時を見計らい大包平チャレンジ。

 

もう一度一人でケースの前に立ってみる。やっぱり、大きい。何というか、存在に重圧感がある。今度は、地鉄と刃文をじっくりと見てみる。細かい。特に刃文は小乱らしくうねうねしていて、ケースの展示の照り返しも眩しく何とも切れ味がよさそうである。その割に鋒がちょっと小さく、可愛い。

そして何より、反りが美しい。

何でこれが天下五剣じゃないのだろう、と自然と思った。

 

大包平のエピソードを調べると一国程の価値があるとされ、時の天皇や、敗戦直後来日した某元帥にさえ触れさせなかった刀と出てくる。成程これはそうだろう、と納得した。

 

さてその後、もう一度刀のスペースをぐるりと回ってそれぞれの特徴を見てから順路を進み、物販コーナーへ。そこで手入れの仕方の見本誌を見たり、ハニワ(トーハクくん)可愛いなと和んだりして、博物館を後にした。

 

 

午後の比較的早い時間に入ったが、出てきたのは閉館時間間際。たっぷり2時間以上は見ていたことになるが、全然飽きなかったことに驚きを覚えつつ、これからどうする?なんて話をした結果、実際の刀を見に即売会へ行くことに。

 

トーハクから歩いて10分くらいだろうか、雑居ビルの2階でそれは開催されていた。一歩踏み入れると、ずらりと刀が並んでいる。短刀、脇差、打刀、太刀。刀身だけでなく鞘が並んでいたり、柄も付いていたりと抱いていたイメージに近い。

先程の展示室には柄の付いているものは無かったので、実物を元に縁頭や目貫等の刀装具を解説してもらい、知識を実感させてもらう。

何とこちらでは実際の刀を触らせていただける、ということでミーハー心丸出しで太刀を持たせていただいた。

樋(ひ)を入れていない(鎬の部分をを削っていない)太刀であったこともあって、重い。これが実戦であれば馬上から振り下ろしたりして片手で使ってたんですよ、と聞いて片手でチャレンジしようとするがそもそも片手で持てない。おっもい。弊本丸の太刀の子達、みんなこんなの軽々片手で扱ってんの???

 

ちょっと休憩、ということでお茶をいただきながら話を伺わせていただく。刀剣を所持する、ということについて男女の意識の違いなんかを伺いながら、友人が購入を迷ってるという刀を見せてもらった。

目釘を抜いて柄から外し、鎺(はばき)も外して博物館で見た刀身だけの姿へ。そうやって外すんだ、という驚きと先ほどにわかで覚えた知識とのすり合わせの納得をしつつ、実際の刀を触らせてじっくり見せてもらう。

 

美しい。

 

その一言に尽きる。大包平に感じたのとはまた違う、繊細な美しさ。細く鋭く、鋒がスっと伸びている。

博物館にて解説してもらいながら様々な刀を見た時と、同じ感想を抱く。これは、刀は、実用品であり芸術品だ。

 

どこで聞いたかあるいは読んだか、高級な茶碗は使われてこそ、という言葉がふと胸を過ぎる。

今の世の中で刀を取り出すことは少ないが、少なくとも明治の廃刀令が出るより以前は刀はもっと身近なものだったのだろう。その時は、それこそハサミやカッターのように、刀はもっと生活に密着したものだった筈だ。

そんな生活に密着していたものがこんなに美しいなんて。

なんて、豊かな暮らしをしていたのだろう。

 

そんな生活に想いを馳せながらお話を伺っている最中、一家にひと振りなんて言葉が出てきた。勿論刀はそんな安いものではないし、危険な代物ではあるから現実的には難しい話だろうが、でもそれが叶ったら素敵だろうな、と思う。

 

色々と伺って、最後に自分が持つなら、という観点で刀を選ばせて貰う。色々な刀を今日見た中で、どれがいいのか、と。

選んだのは、太刀で刃文は乱、反りが約2cmあるもの。

やっぱり、大包平の影を追っているのだろう。

 

お財布にも事情があるのでその日はかなわなかったが、いつかお迎え出来たらいいな、と思う。

 

 

そうそう、大包平は2枚だけ写真を撮らせてもらった。帰宅しても写真を見ると、重厚感が伝わってくる。これはとても優れた刀だなとしみじみと実感する。

今日取ってもらったトーハクのチケットは、ネット予約さえすればもう一度入れるらしい。

刀についてまた少し自分でも勉強して、是非また見に行こうと思う。